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景観木工で「木の街」の実現、地域活性化へ! 木工・適した部材を提案できるかが鍵に

長野県上田市は、町の風景を木で包み込み「木の街」にするため「景観木工」に取り組み、地域活性化へつなげている。木製の家具や小物だけではなく、街角にも木材活用を広げることは、木材供給側にも新たな可能性が生まれるだろう。

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木で飾りつける「景観木工」で
人気を呼ぶ現象が発生?

前回は木製の家具や小物の魅力について紹介したが、基本これらは屋内、それも個人的な住宅などの空間で使われることが多い。これを街角に広げることができないだろうか。そんな挑戦として行われているのが、「景観木工」だ。取り組んでいるのは長野県上田市。町の風景を木で包み込み「木の街」にしていこうという挑戦である。

上田市は戦国時代に真田一族などが活躍した城下町として知られるが、駅前の商店街の風景は平凡なものだった。(電線の地下化は行っていた。)そこで歩道や商店の面前などに木材をもっと使うことで街角の景観を変えていこうという試みが、NPOなどの呼びかけで行われている。

具体的には、商店街の歩道に飛び出す無骨な鉄の配電盤ボックスを木材で囲ったり、木のベンチを設置した。また閉店してシャッターが下りたままの店の前も木材で覆いベンチを設置した。駐車場の無骨な鉄製の柵の上に木を被せるようにした。ほかにも薪ストーブ用の薪の保管場所を町の一角につくった。

これらの試みで、町の景観はガラリと変わる。とくに歴史的な家屋を復元したわけでもないのに、不思議と“歴史の街”ぽくなったのである。観光客も、何気なく町のベンチに座るようになり、地元の人と会話する機会が増えたという。なかには閉店した店なのに、おしゃれだからと写真に撮ってSNSにアップされ、人気を呼ぶという現象まで起きる。最初は懐疑的だった人々も、自分たちで自分の家の前を木で飾りつけるようになったというから意識も変えたのだろう。



各地に広がる「木の街づくり」
「景観木工」を提案できるか
適した部材を提供できるかが鍵に

木の街づくりといったキャッチフレーズはよくあるが、コンクリートのビルや商店などを木造に建て替えるのは簡単なことではない。また高層ビルを木造にするのは技術的にも法的な面からも難しい。しかし、この方法……建物そのものを建て直すのではなく目に映る表だけを木で覆うのなら、安価で簡単に取り組むことができる。それでいて効果は大きいのだ。

実は、この発想そのものは各地に広がっている。観光地だけでなく、飲食店などが外観や内装に木を取り入れるケースは増えてきた。ショッピングモール内の店舗なのに内装が木ばかりという店も登場している。あるいはデッキなどを築くこともある。また、10階建以上のビルが道に面した外装に木製のルーバー(細長い板や羽板状の部材を平行に複数並べたもの)を張るようになった。これで見た目が一新しているのだ。ルーバーは、通気性を保ちながらの日除けや目隠しなどの役割があるが、建物全体の景観を変えるのにも役立つ。


日本圧着端子製造ビル

もちろん建築物の外構や内装に木材を使うときには、耐火性を要求される、汚れてきたら掃除が大変など気をつけるべき点もある。しかし、建て替えに比べたら遥かに安上がりで短期間の施工で済み、イメージを変えられるといったメリットも多くある。手軽な「木の街づくり」なのである。

建築側には、木材を景観に活かしたいという思いは強まっている。むしろ、木材供給側が建築設計者に「景観木工」を提案できるか、適した部材を提供できるかどうかが鍵ではなかろうか。

PROFILE

森林ジャーナリスト

田中淳夫


静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』『絶望の林業』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『獣害列島 増えすぎた日本の野生動物たち』(イースト新書)など多数。奈良県在住。

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